尖圭コンジローマ(ヒトパピローマウイルス)
参考文献:尖圭コンジローマの診断と治療 東京女子医科大学病院 川島眞
尖圭(せんけい)コンジローマとはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスに感染することで起こる感染症です。
このヒトパピローマウイルスは80種類以上あると言われ、性交渉の経験がある女性なら50%以上が生涯で一度は感染すると言われていますが、感染したからといって必ずしも発症するわけではありません。
ヒトパピローマウイルスには高リスク型と低リスク型があり、低リスク型のヒトパピローマウイルスに感染することで起こるのが尖圭コンジローマです。
特徴は先のとがった独特の形をしたイボ状の良性の腫瘍が性器周辺や肛門周辺などにいくつもできる点です。
痛みやかゆみといった自覚症状はほとんどありません。自然治癒することもありますが、再発も多い症状です。
高リスク型に感染した場合もすぐに症状が出るわけではなく、多くの場合数年で自然治癒します。
これは免疫力によってウイルスが自然に排除されるためです。
しかし、免疫力が低下している場合など、長い間感染が続いた一部のケースでは子宮頸がんや外陰上皮内腫瘍(がいいんじょうひないしゅよう)、膣上皮内腫瘍(ちつじょうひないしゅよう)を引き起こすこともあり、それぞれが外陰がん・膣がんに進行することもあります。
病原体
尖圭コンジローマの原因となる低リスク型にはHPV6型、HPV11型が挙げられます。
これに対して子宮頸がんなどの原因になる高リスク型HPV16型、18型などがあり、この2つ特にがんに進行するのが早いと考えられています。
特に20~30代で子宮頸がんを発症している女性の多くがこの2つのウイルスに感染しているという報告があります。
感染経路:性行為あるいはオーラルセックスなどの類似行為によって感染します。
皮膚や粘膜の小さな傷から菌が入るここともあります。外陰部に接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などを患っている場合は特に注意が必要です。
潜伏期間:2~3ヵ月と言われていますが、潜伏期間が長い場合は半年に及ぶこともあります。
そのためいつ感染したのか特定できないケースも多くなっています。
感染部位
女性の場合、おもに外陰部や肛門周辺、膣、子宮頚部、膣前庭などに、男性の場合、亀頭部分、冠状溝、包皮、陰嚢、肛門のほか、尿道口にもできることがあります。
病気の症状
2~3か月程度の潜伏期間を経て、先の尖ったイボが陰部周辺にでき、ニワトリのとさかやカリフラワーのような形になることがあります。
ほとんどの場合、痛みやかゆみなどの症状はありませんが、できた場所によって痛みやかゆみを感じることもあるようです。
人によっては患部に違和感を覚えたり、おりものが増える場合もあります。
患部に触ったり、下着に触れたりすることで出血することがあるため違和感を覚えたら、すぐに検査・診察を受けるようにしましょう。
20~30%の割合で3ヵ月以内に自然に消失しますが、完全に治癒せず再発することも多い病気です。
3ヵ月以内に再発する可能性は約25%程度と言われています。
病気の進行(合併症を含む):HPVの種類によっては子宮頸がんや膣がん、外陰がん、陰茎がんに進行することがあります。
検査の方法(採取検体・検査方法):病変部を綿棒でこすって採取することで検査します。
治療方法:軟膏を塗布する治療が一般的です。
イボが完全に消失する可能性は60~70%。気になる場合は外科的治療として切除、レーザー治療、液体窒素で凍結させるなどの処置を行います。
さらに治療後3ヵ月は経過観察を続け、再検査を受ける必要があります。
参照記事:デリケートゾーン・女性器(あそこ・まんこ)や周辺にできもの(イボやぶつぶつ)・しこり・潰瘍・皮膚のただれができる。
予防方法
性交時にコンドームを着用すること。
ただしコンドームでカバーしきれていない部分と接触して感染を起こすこともありますので、100%予防できるわけではありません。
また無防備なオーラルセックスも避けるべきでしょう。感染が疑われたらパートナーと一緒に検査・治療を受けることも大切です。