
軟性下疳(なんせいげかん)
概要:軟性下疳は軟性下疳菌(ヘモフィリス・デュクレイとも呼ばれます)が原因で性器周辺の皮膚や粘膜に大豆粒程度の大きさの潰瘍ができる感染症です。
周囲との境界が赤くなった潰瘍は、触ると軟らかく、激しい痛みを感じるのが特徴です。
感染後、数日でできた潰瘍は膿疱となり、やがて破れて激しいただれや組織破壊を引き起こします。
この分泌物から新たな潰瘍ができ、症状が広がることが多くなっています。
また潰瘍ができてしばらくすると鼠蹊部(足の付け根部分)リンパが化膿性炎症を起こし、腫れるのも特徴です。
現在は日本やアメリカでは感染者数が少ない感染症で、発展途上国で発症する例が多くなっていますが、まれに東南アジアで感染してきた例も見受けられます。
軟性下疳は梅毒と併せて発症することがあり、その場合、これらの病変は数週間でなくなるのが特徴です。
したがって、軟性下疳の治療をして症状がおさまると梅毒を併発していることを見逃してしまうことがあります。
そのため軟性下疳と診断された後は梅毒の検査を行う必要があります。
さらに軟性下疳はHIVの感染伝播の原因にもなっており、近年、検査や的確な治療の重要性が高まっている感染症です。
病原体
軟性下疳菌に感染することで起こります。
感染経路
性行為あるいはオーラルセックスなどの類似行為によって感染します。
また病変部に接触することでも感染は広がっていきます。
潜伏期間
感染後数日から1週間で発症します。
感染部位
男性の場合、亀頭や冠状溝(カリ)部分、包皮内部などに、女性の場合、外陰部や膣前庭などに感染します。
男性の場合、潰瘍がひとつであることが多く、女性は4つ以上複数できることが多くなっています。
その他、口腔内に感染するケースもあります。
病気の症状
大豆粒大の触ると軟らかい潰瘍ができます。
激しい痛みを感じ、やがて潰瘍はつぶれて感染が広ろがって行きます。
その後、鼠蹊部のリンパが腫れ、痛みや発熱を起こします。
性器周辺に痛みを伴うしこりを見つけたらすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
病気の進行(合併症を含む)
軟性下疳を発症すると、激しい痛みを伴うため、放置することはできません。
梅毒を併発していることも多いため、軟性下疳と診断されたら医師の指示に従って梅毒血清検査を受けるようにしましょう。
またHIVに感染しやすくなるのも特徴です。
検査の方法(採取検体・検査方法)
患部の組織を採取して検査する方法もありますが、特徴のある症状が起こり、激しい痛みもあることから視診のみで軟性下疳と判断されることが多くなっています。
治療方法
アジスロマイシンやテトラサイクリン、ストレプトマイシンなどの抗生物質を内服したり、健康な部分の肌に筋肉注射して治療します。
潰瘍部分にはゲンタマイシン軟膏をガーゼに塗布して患部に貼り付けます。
治療が有効であれば、3日以内に症状が軽減し、1週間程度で大幅に改善します。
改善が見られない場合、薬を変えたり、他の性感染症の可能性を疑う必要があります。
予防方法
性交渉時にコンドームを使用すること。
患部に接触することでも感染するため、性交渉は治療が完了するまで禁止となります。
また海外で感染することが多いため、海外での無防備な性行為やオーラルセックスは避けるべきでしょう。
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